RFIDパッケージ・NFCアプリの導入事例を紹介します。

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レンタル品の管理業務においてRFIDを用いるメリットを探る
レンタル品管理におけるRFIDの活用

月刊自動認識2010年3月号

月刊自動認識2010年3月号
月刊自動認識2010年3月号

自動認識技術であるRFIDを利用したシステムを導入するにあたり、レンタル業界は比較的導入しやすいと考えられる業界である。 RFIDシステムの導入で必ず問題となるのがランニングコストであるRFタグの価格であるが、レンタル品の場合には1度貼り付ければRFタグが剥がれたり壊れたりするまで繰り返し利用することができるため、 ランニングコストとしてはRFタグを使い捨てで使用する場合に比べて1回分のコストを薄くすることが可能となる。 このようなレンタル業界の業務において、RFIDシステムはどのようなメリットを生み出すのか、今回は学生の実験器具の貸出管理にRFIDシステムを導入した千葉大学のパーソナルデスクラボの例を紹介しながら考えてみたい。

パーソナルデスクラボとは?

写真1
写真1

写真2
写真2

理科系文科系合わせて9学部を擁する総合大学である千葉大学では、これまでも実験教育の充実に積極的に取り組んできたが、これらを運営するための実験室や実験装置の維持管理には非常に手間と経費がかかるため、 用意できる実験装置の数などが限られてしまいすべての学生が必ずしも有効な実体験ができるとはいえないのが現状であった。
千葉大学では、この問題を改善するべく大学の教養課程(普遍教育)における物理学基礎実験において、さまざまな履修履歴を持って入学してくる学生に対応できる新しい実験教材の開発を行ってきたが、 平成19年度に「パーソナルデスクラボを用いた実験教育の展開」[1]が文部科学省の特色ある大学教育プログラムに採択されたことによって、その開発が一気に進んだ。
パーソナルデスクラボ(以後PDLと略す)の最大の特徴は、実験装置自体が非常にコンパクトであるという点である。 その一例として写真1に従来の弦の振動実験装置、写真2にPDLの弦の振動実験装置を示す。 従来の実験装置が約1mにも及ぶ大きさなのに対して、PDL実験装置のほうはB5版程度の鉄板の中にすべての実験部品が収まっている。
またPDL実験装置は、従来のように実験室にあらかじめ設置された出来合いの実験装置ではなく、実験を行うごとにそれぞれ必要な部品を学生一人一人が自ら組み上げていくので、 実験装置の原理や仕組みを的確に把握することができ、内容の理解がいっそう深まるのと同時に、ものを作り上げる喜びも同時に体験する ことができるようになっている。さらに実験の部品をいくつかの実験テーマで共有することになるので、 設備に関するコストも削減できる。
現在は開発中のものも含めて、光の実験、電気の実験、磁場の実験、力学の実験、熱の実験、合わせて約20テーマほどの実験装置が準備されている。 PDL実験部品は100種類以上あり、それが約100名分用意されているので、総点数としては約10000点の部品があることになる。

写真3
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このPDL実験装置を使用して、学生一人一台の実験装置で実験を行う授業を平成20年度から開始したが、実際に授業を運営する上での問題点が明らかになってきた。 現在PDLの実験部品は、部品ごとにまとめられて棚に収められ管理している。 これは収納スペースが節約できることや、各部品の数を確認できるなどの利点があるが、最大の欠点は実験のたびに学生がこまごまとした部品を取りに行かなくてはならず、実験装置の配布や回収に時間がかかってしまうということである。 具体的には、最大で約100名の学生が実験部品を一つずつ受け取り、授業が開始できるようになるまでに20分から30分の時間を必要としてしまう。 1コマ90分の授業内の約1/3程度の時間を費やしてしまうことは、早急に改善すべき問題点である。(写真3)

図1
図1

図1
図2

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図3

そこで数多くあるPDL実験部品を効率よく管理し運用することを目的として、各実験部品を実験項目ごとにキット化して管理するためのシステムを新たに開発することになった。 具体的には、実験項目ごとに実験部品をキット化して容器に収納し、その容器(カゴおよびケース)にキットの中身を表示し、ナンバリングおよびRFタグをつけて貸し出しと返却を管理する。 また主要な実験部品についてもRFタグをつけて管理することとした。(図1、図2、図3)

キットの種類は次の6種類である。

1)共通キット:
鉄板、テスター、リード線(4+2+2)、電池、定規(プラ)、バインディングポスト、AC ア ダプター

2)光キット :
半導体レーザー、スリット、PD1、PD2、ノギス、プリズム、偏光板、分度器、スクリーン、クリップ、調整用マグネット、抵抗(1k、100k)

3)電気キット:
棒磁石、ネオジ、はさみ

4)磁場キット:
実験台、磁場観察層、コイルx2、鉄板銅板アルミ板、方位磁石、棒磁石、ネオジホール効果観察層、磁場測定センサー、ひも

5)力学キット:
穴あき鉄板、ヒートシンク、振り子、固定金具、調整用マグネット、定規(金)弦の振動一式(10 点程度)

6)熱キット :
熱電子測定用部品(10 点程度)

実験のはじめに各学生には決められたキットの番号を通知し、毎回同じ番号の部品を使用することとする。
キットを持ち出す際と返却の際にはRFIDリーダでRFタグを読み込み、部品の過不足や返却漏れがないかなどのチェックがすばやく行えるシステムとなっている。
このシステムの導入によって、学生は実験ごとに決められたキットナンバーの容器を取ってくるだけでよくなり、実験装置の配布や回収の時間が大幅に短縮できることになる。 また誰がどの番号の装置を使ったかが明らかなので、出欠も同時に取ることができ、さらに学生の実験部品の整理整頓に関して意識の改善も期待でき、部品の紛失などを最小限に抑えることができる。

また千葉大学では高大連携を進めており、その一環として実験装置の外部の貸し出しなども行っているが、この貸し出しも同時にこのシステムで管理することができる。

システムの概要

RFタグは各キットのカゴおよびケースに取り付けら れており、主要な実験部品にも取り付けられている。
カゴおよびケースに取り付けられているRFタグは貸出・返却の管理に用い、実験部品に取り付けられているRFタグは部品の過不足をチェックするために用いる。
貸出・返却時の一括読取を可能にするため、UHF帯のRFタグを使用している。 実験部品は大きさがそれぞれ 異なっており、金属製品が多いため、部品ごとに最適なRFタグを選定し取り付けを行っている。
タッチパネルで操作可能な端末PCとUHF帯の据置型リーダを実験キットの保管場所の出入口に設置しており、 キットの貸出・返却時にRFタグを読み込ませ、貸出・返却処理と部品の過不足が同時にチェックできる仕組みになっている。(図4)

1、貸出

学生は貸出の際、実験キットの保管室に入り、自分 の番号のキットを取り出す。 その後部屋を出る際にRFIDリーダのアンテナの前にキットを置き、RFタグを読み込ませる(図5、図6)。 RFタグは一括で読込され、貸出処理が行われる。 部品が足りない等の問題がある場合は警告が表示される。(図7)

図4
図4

図4
図5

図4
図6

図4
図7

2、返却

返却時は保管室に入る際にキットをRFIDリーダのアンテナの前に置き、RFタグを読み込ませる。 部品が足りない等の問題がある場合は貸出時と同様に警告が表 示される。(図8)

図8

図8
3、外部への貸出
近隣の高校などへ実験器具を貸し出す場合があるた め、その際には専用の画面で入力を行う。 貸出器具のRFタグはハンディリーダを利用して1点1点読み込ませる。(図9)
図9

図9

レンタル品管理における効果

レンタル品の管理にRFIDシステムを導入することにより得られる効果とは何だろうか。 まず即効性をもって感じられる効果は検品のスピードと正確さである。
レンタル業務において貸出・返却時の検品作業はレン タル業務の多くの部分を占める重要な作業であり、特 にスピードと正確さを求められる部分である。
スピードアップはRFIDの大きな特徴である一括読取によって実現される。 従来のバーコードによる管理では1点1点の読取が必要であるが、RFIDでは数十個のRFタグを1度に読取可能なため、複数の品物を一度に処理することが可能となる。 それにより業務効率の向上やお客様の待ち時間の短縮というサービスレベルの 向上を実現することができる。
正確さはRFIDの固体識別機能により実現される。RFタグは1つ1つが個別で認識される。 バーコードでは種類別にバーコードが発行される場合が多く、固体の識別を行う例は少ない。 (同じ製品には同じバーコードを利用する例が多い)RFIDを用いたシステムでは個別に正確な管理が可能であるため、どの品物が何回くらい使用されたかなどの履歴を保持することができ、在庫補充や故障予測などの管理まで行うことができるようになる。
またそれ以上の効果が得られる場合がある。最近ではパレットのレンタルにRFIDが活用されており、DVDの自動販売などもRFIDを活用して実現されている。 このような例ではRFタグから読取ったデータをその場で活用するだけでなく、それらをネットワークで繋ぐことにより膨大な数の管理物品でも個品管理を行うことができるようになっている。 物品の総数の把握はもちろんのこと、それぞれの個品の所在や状況などが正確に把握できるようになっているのである。
将来的には様々なものにRFタグが取り付けられる時代がくると思われるが、その時にはどのようなことが可能となっているのだろうか。 レンタル業界ではそのような時代を先取りして垣間見ることができる。

参考文献
[1] 大学の物理教育 「パーソナルデスクラボを使
用した物理実験教育の展開」 2009 Vol.15 No.2 P82-
86
[2] 千葉大学普遍教育物理学 ホームページ
https://www.cphe.chiba-u.jp/ge/for_student/butsuri/
[3]   千葉大学大学院教育学研究科  修士論文
「物理実験机上組立式装置 パーソナルデスクラボPD
Lの開発」 スー カリヤン 2008年1月
http://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900047270/R-KR-K-03.pdf