RFIDパッケージ・NFCアプリの導入事例を紹介します。

製品情報

月刊自動認識2013年02月号
店舗におけるNFCの活用法

月刊自動認識2013年2月号

月刊自動認識2013年2月号
月刊自動認識2013年2月号

街中ではNFCを利用するシーンが多く見られるようになった。SUICAやPASMOなどの交通系カードを自動改札にタッチする、SUICAやPASMOでコンビニのレジや自動販売機で決済するためにタッチする、同様におサイフケータイでもタッチする。交通系のカード以外にもEdyやWAON、nanacoなど多くの種類の電子マネーカードをタッチして利用できる。このようにあたりまえのようになった風景だが、タッチして利用というシーンは主に決済で利用することが多い。そのため逆に決済でしか利用できないようなイメージがある。NFCという技術は決済に限ったものではないので、他にも様々な利用シーンがあってもよい。今回はNFCをどんな風に使えるのか、店舗での利用をを中心に事例を交えてご紹介したい。

決済以外での活用

まずすぐにイメージできるのはポイントの利用である。家電量販店を筆頭にさまざまなお店でポイントカードが存在する。これをNFCに置き換えることは可能だ。またポイントだけでなく、来店回数などの情報も把握できるようにすると、店舗側から来店者に対して相応のサービスを行ったりできるようになる。
また昨年の冬モデルのスマートフォンには多くの端末にNFCの機能が搭載されている。これを利用することで例えば来店者自らが商品についているNFCタグをタッチして詳細情報を得られるようにするなどの活用が考えられる。このようにNFCと言ってもカードでの利用だけでなく、来店者が所持するスマートフォンとの連携まで考えると、様々な利用シーンが考えられる。
実際にどのような利用がなされているだろうか。当社では昨年末に行われたイベントにてNFCを活用した仕組みを提供させていただいたので事例としてご紹介したい。

活用事例「京都 SAKE & WINE エクスペリエンス」

昨年11月に京都のKBSホールにて一般社団法人国際食品振興会主催のイベント「京都 SAKE & WINE エクスペリエンス」が開催された(図1)。京都市内の酒蔵20社の日本酒および世界のワインが会場にて販売され、日本酒とワインのコラボレーションを楽しもうというイベントである。

図1
図1

イベントの流れ

イベントの参加者はあらかじめ申込み用のWEBページへアクセスし、チケットの購入を行う。そうすると後日チケットが郵送されてくる。このチケットにはNFCが付いており、会場内でワインなどの商品と交換できるポイントが5ポイント分あらかじめチャージされている(写真1)。チケットにはQRコードも付いている。これを利用して携帯電話などからメールアドレス登録用のサイトにアクセスできるようになっており、事前に自分のメールアドレスが登録できるようになっている。登録は任意だが、登録しておくとイベント時に購入した商品の詳細情報がメールで配信されるようになる。
イベント当日にチケットを持参し、そのチケットを利用して会場内の各ブース店舗の商品を購入することができる。商品によってポイントは異なるが、お酒は概ね2ポイントから購入可能だ。メールアドレスの登録を行っていれば、商品購入時にその商品の詳細情報がメールで送られてくるので便利だ。チケットのポイントが無くなった場合は受付にてポイントのチャージを行うことができる。

写真1 NFCタグ付きチケット
写真1 NFCタグ付きチケット

商品購入時の詳細

商品は各ブース店舗に陳列されており、NFC付きの札が取り付けられている(写真2)。ブース店舗にはNFC対応のスマートフォンを所持したスタッフが待機しており、このスマートフォンを利用して商品の購入が行えるようになっている。具体的には各商品に付けられたNFC付きの札と来場者のチケットのNFCをスマートフォンで読み込むだけでよい(写真3)。
来場者がAという商品の購入を希望した場合、スタッフはまず商品AのNFCを読み込む。画面には商品Aの説明と、差し引かれるポイント数が表示される。引き続き来場者のチケットをスマートフォンで読み込むと、チケットの残ポイント数などが表示され、購入するかどうかをボタンで選択する(写真4、写真5)。
操作はスマートフォンによるタッチのみで可能なのでとても簡単だ。今回はスタッフがスマートフォンを所持したが、先に述べたとおりNFC搭載のスマートフォンは急増しており、いずれ来場者のほとんどが所持することになるだろう。そうすれば来場者自身がNFCを利用して自ら情報を得たりすることが可能になる。

写真2 NFC札が付けられている
写真2 NFC札が付けられている

写真3 商品の購入
写真3 商品の購入

写真4 スマートフォンで操作
写真4 スマートフォンで操作

写真5 残ポイントの確認
写真5 残ポイントの確認

安価なシールタグを使用

 通常このようなポイントや決済を行うものとしてはプラスチックのカードがほとんどだ。しかしカードは単価が高いので、イベントなどの使い捨てのような利用には費用的に難しい。そこで安価なシールタグを使い、チケットに直接貼ることで費用を抑えることができた。シールタグであれば1枚50円未満で購入できる。

メールとの連携

 チケットに記載されている説明に沿って自分のメールアドレスを登録しておくと、イベント会場で商品購入時に購入した商品の詳細情報がメールで送られてくる。このサービスは、購入した商品の詳細情報が得られるというだけでなく、購入の履歴としても利用できる。これは特にお酒のイベントなどでは有効だ。お酒には様々な銘柄があり、飲んだ商品の銘柄をすべて覚えておくことは不可能だ。メールとして履歴が残っていれば、3番目に飲んだものがよかったなどの記憶からその商品の情報をを得ることができ、再び購入することができるようになる。

ポイントの購入

 チケットの残ポイントが少なくなった場合、受付にてポイントをチケットにチャージすることができる(写真6)。このことはイベント内で現金のやりとりが受付の1箇所のみであることを意味する。これは各ブースにお釣りなどを準備する必要がないなどイベントを行う側からのメリットも大きい

写真6 受付でポイントのチャージ
写真6 受付でポイントのチャージ

主催者側のメリット

 今回のようなシステムを利用することで、主催者側のメリットも多くある。まずは来場者数などのデータが正確にわかることだ。また各商品がどれだけ販売されたかなどの商品に関するデータも取得できる。これだけでも来場者のどれくらいがどのブース店舗で購入しているのか、ブース店舗の位置と購入数との関係はあるのかなどの様々な分析ができる。また、購入された時間も記録できるので、時間帯によってどの商品がよく売れたのかなどのタイムラインによる分析なども可能だ。

おわりに

今回ご紹介したシステムはもちろんNFCを利用しなくても実現可能である。実際にこのイベントにおいても前回までは紙のチケットを使用していた。しかしNFCを利用することで生まれる利点もある。まずはチケットの偽造防止だ。紙のクーポン券のようなチケットはコピーすればそのまま使えてしまうが、NFCであれば偽造できないのでそのような不正行為を防ぐことができる。またチケットと今回のメールアドレスのような個人情報を結びつけることによる高度なサービスも可能となっている。さらにタッチによる操作ということでエンターテイメント性が増し、イベントとしての盛り上がりも大きくなる。そして一番大きな利点は、会場内での来場者の行動が記録として残ることで、データの分析が可能となる点である。これまではアンケートなどの方法でイベントの効果や改良点を探るしかなかったが、データの分析により正確な効果の測定や様々な角度からの分析が可能となるのだ。
NFCを活用することで手軽に濃度の濃いデータを収集できる。それこそが店舗におけるNFC活用の大きなポイントと言える。