RFIDパッケージ・NFCアプリの導入事例を紹介します。

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NFCで始める実践RFID
第126回:サプリメントとNFC

はじめに

月刊自動認識2023年4月号
月刊自動認識2023年4月号

予想できていたことではあるが慌ただしい年度末を過ごしている。毎週のように沖縄から出張に出掛ける日々は変わりないが、納品作業およびそのための準備作業により予定が埋め尽くされており、まさに目の前のタスクに追われ続けている感じである。本来おこなうべき、少し先を見据えたユースケースの開発やトライアルなどに時間を割くことができないのは何とも心苦しいところではあるが、きっと4月に入れば落ち着くはずと信じて、粛々と業務を遂行していきたい。さて前回は旅行用のトランクに取り付ける表示機能付きのNFCデバイスの紹介を行った。落ち着きつつあるコロナ禍の様子を見ながらではあるが、春先からは海外出張も再開できそうなイメージを持ちながら、是非実際に使用してみたいものである。そして今回は全く違うテーマで論考を進めていきたい。

サプリメントとNFC

40代も半ばを過ぎて、老眼を筆頭に様々な類の体力的な衰えを感じ続ける日々だが、大病にかかることもなく健康状態としては比較的良好なステータスを継続できているのは何ともありがたいことである。同年代の友人たちとの会話において、痛風にまつわる諸々が出てくることが多くなったことに驚きを隠せない部分はあるものの、まぁ上を見えても下を見えてもきりがない。それぞれが適切なタイミングで健康の大切さに気がついて、それなりの対処/ケアを始めていく、友人たちとのそんな会話を肴に、不健康な飲酒を楽しむ。そんな矛盾を抱えながらの人生において、常用する薬はないものの、私自身ある種のサプリメントを常備するようになった。具体的には、EGCgという名称のサプリメントだが、その効用そのものについて語ることが避けるとして、その飲用の運用について発生しがちな課題と、その解決におけるRFID/NFCの検討について議論を進めていきたい。

図1:サプリメントにNFCタグ
図1:サプリメントにNFCタグ

まずは、図1のようにケースにICタグを取り付ける。そう遠くない将来に、サプライヤーが自らICタグを取り付けた状態でサプリメント商品を流通させる時代が来るような気もするが、現時点ではユーザが自ら貼らなければいけない。家庭内の限られたアイテムであれば、とくに貼ることが苦にならないどころか、喜びですらあるところだが果たしてどのようなユースケースを生み出すことができるだろうか。

最初に解決したい課題は、飲用の継続性確保あるいは習慣化といったところだろうか。どんなに効能の高いサプリメントであっても、飲用しなければ意味がない。それも1回飲めば良いというものではなく、指定された頻度を守りつつ継続的に飲用することが何より肝要である。何かしらの医薬品であれば、例えば痛みなどの症状改善のための服用ということになるので、飲み忘れというのは少ないかもしれない。飲み忘れることが、痛みなどダイレクトなフィードバックのトリガーとなるため、痛みを抑えるために飲用するというサイクルが継続されることが予想される。この時期で言えば、花粉症対策の医薬品などもそうかもしれない。いっぽうでサプリメントはどうだろうか。もし飲まなかったとしても、痛みや苦しみなどが短期的に痛感されるようなものではないことが多いのではないだろうか。飲まなくてもすぐに弊害がないのであれば、そもそも飲用する意味は何なのかと考えたくもなるが、対処療法ではなく体質改善に向けては、やはり継続的な飲用が必要となるのであろう。この微妙なモチベーションで飲み忘れを防止するとなると、人の意志だけに頼るのはやはり難しいと考える。以前にも紹介している飲み忘れアラートの発動だったり、あるいはポイント管理アプリとの連動から、継続性を客観的に評価する仕組みを作って、実績に基づいて自分にご褒美(例えば、いつもより少しグレードの高いウィスキー/日本酒を飲める)を与えるなどの仕組みが有用ではないだろうか。NFCを活用して、飲用習慣の定着化、継続というのは非常に現実的な活用方法であると思われる。

日常的な飲用習慣を継続するためには、手元にサプリメントが常備されている必要がある。近所のコンビニで販売されているようなものであれば、もし無くなっても買いに走ればよいのかもしれないが、わたしが飲用しているのは海外から輸入する必要のあるもので発注から納品までのリードタイムが1週間程度はかかるものである。同じ効能でもう少し手軽に調達できるものを探す手もあるかもしれないが、入手容易性と(心理面でのバイアスも絡めた自己暗示的な)効能感とのトレードオフがそれを許さない。簡単に入手できないほうが何となく効きそうな気がする、という何とも科学的根拠に欠ける主張であるが、大切なのは信じる心。賞味期限があるので無用に大量の在庫を抱えることも出来ないとすれば、どのようにして補充発注を適切なタイミングでストレスフリーに実行できるかという問題になってくる。このあたりはNFC的には何の難しさもないと思うのだが、例えばECサイトの当該製品のページのURLをNDEFフォーマットでエンコード、そのNFCタグをサプリメントに貼っておけば、スキャンするだけでオーダーすることができる。毎日手に取るのであれば、空っぽになってからではなく、ある程度なくなってきたところでオーダーすることは難しくないと思う。使用量に関係なくスケジュールベースで自動的に補充発注が飛ぶ仕組みもできるかと思うが、飲用の効果見合いという段階であれば意識的な補充発注行為におけるストレスフリー化というあたりが現実的ではないだろうか。

さらに考えていくと、やはり探索というのは家庭内のユースケースにおいてはキラーアプリになってくる。置き場所を決めていたとしても行方不明になることがある。とくに出張の多い身となると、いつでも自宅で決められた場所でサプリメントを飲用できることはなく、かといって自宅、車、オフィス、出張先とあちこちにサプリメントを散りばめて保管するのもスマートではない。小さいピルケースを持ち歩くのは試しているが、移し替えるという行為は意外と継続が難しいものである。というわけで、購入したサプリメントが家のどこにあるのか、あるいは車の中に置き忘れているのか、探し回る機会が多くなってしまうわけだが、そのような場合に備えてUHF帯のICタグを貼っておくことはとても便利である。見当たらないと思った瞬間にリーダーを手に持ち探索モードに切り替えてあたりをウロウロすれば、そんなに広い家でもないのですぐに探し当てることができる。あるいは探索音がならなければ、家の中には存在していないことが即座に確定できるため、次は車やオフィスへ探しに行くだけである。

おわりに

というわけで、飲用の継続性/ストレスフリーな補充発注/紛失時の探索支援といった感じで、サプリメントのケースに貼ったICタグの活用方法についての紹介を行ってみた。しばらく使ってみると、おそらくこれ以外のユースケースも出てくるかもしれないが、そのあたりの披露はまた別の機会に譲るとして、次回も新たな活用方法を探っていく予定である。