RFIDパッケージ・NFCアプリの導入事例を紹介します。

製品情報

月刊自動認識2015年08月号
ライブイベントにおけるNFCの活用事例

月刊自動認識2015年8月号

月刊自動認識2015年8月号
月刊自動認識2015年8月号

2015年2月7日と2月8日の2日間、沖縄国際通りの桜坂劇場を中心とした20箇所のライブハウスにて開催された「Sakurazaka ASYLUM 2015」においてNFCカードを利用したスタンプラリーを実施した。

来場者にはNFCとQRが付いたスタンプカードが配布され、来場者に対する情報配信やスタンプラリーとして利用可能だ。情報配信にはプラットフォームとして「tapee」が、配信媒体として「まちのたね」を使用した。

情報配信をコントロールする「tapee」

tapeeは、携帯電話やスマートフォンがNFCタグやQRコードを読み取って画面に表示する内容をクラウド側で自由コントロールできる新しい仕組みで、従来はNFCタグ側にアクセス先のURLを書込んでおり、アクセス先を変更するためにはNFCタグを貼りかえる必要があった。

tapeeはクラウドサーバー上にNFCタグ1個に対し1つずつの管理機能を持たせ、複数サイトを登録したり変更したりが自由にできる、全く新しいNFCソリューションツールである。

表示機能

・アクセス先URLの差替え、複数設定、時間帯による自動切替え
・アクセス先URLをスマートフォンに設定された言語によって切替え
・広告URLの差し込み
・端末側にはアプリが不要
 (表示はtapee内で生成されるQRコードを読み取っても表示は同じ)

分析、管理機能

・タグのタッチした際にGPSデータを取得して記録する
・サイト単位、タグ1個単位でタッチされた回数を記録する
・上記のCSVデータ一括ダウンロード
・ICタグ、表示URL等の設定情報の一括アップロード
 (tapeeシステム内で生成されるQRコードを読み取っても同様のデータが取得できる)

来場者にカードを配布

来場者1,000人に対して図1のようなNFCタグとQRコードが付いているカードを配布した。カードの裏面には詳細な利用方法が記述してあり、カード自体をスタンプラリーの台紙として利用可能だ。

NFCとQRが付いたカード(表)
図1-表

NFCとQRが付いたカード(裏)
図1-裏

NFCスタンプラリー

20箇所の会場のうち、桜坂劇場、Output、G-shelterの3箇所と、会場のどこかに出没するアサイラムさんが持っているスタンプマシンにカードをタッチすると、カードにスタンプが記録される。

スタンプマシンは図2のようなNFC搭載のAndroid端末を使用し、こちらをカードにかざすとカードに対してスタンプを付与することができる。攻略したスタンプはスタンプマシンの画面上で確認することができる。

図2 スタンプマシン
図2 スタンプマシン

スタンプイベントをやっている会場(写真1)では、スタンプマシンを持ったスタッフがいるので持参したカードを掲示するとスタンプをもらう事ができる。 三カ所のライブ会場のスタンプを揃えて桜坂劇場に行くと景品がもらえる抽選会に参加可能となる。
写真1 会場でスタンプゲット
写真1 会場でスタンプゲット

イベントエリア内に出没するアサイラムさん(写真2)もスタンプマシンを持っており、見つけるとレアなアサイラムスタンプがゲットできる。
写真2 アサイラムさんを見つけてゲット
写真2 アサイラムさんを見つけてゲット

まちのたねASYLUMで最新情報をゲット

スマートフォンでNFCにタッチするか、またはQRコード を読み込むと、ASYLUM2015各会場の最新情報を伝える 特設サイト「まちのたねASYLUM」にアクセスできる(写真3)。 このサイトを見ることで、各地に点在しているライブ ハウスの状況が確認でき、ライブのスタートに合わせ た行動をとることが可能だ。

現在演奏しているアーティストの情報表示
写真3 まちのたねにアクセス

また、アサイラムさんがどこに出没しているかの情報も確認できるので、レアなアサイラムスタンプを入手できる確率が高まる。

導入効果

残念ながらNFCによるアクセスはあまり多くはなく、QRによるアクセスの方が多かった。Android端末にNFCが搭載されていることを知らない、または使い方が分からない人が多いのだろうと思われる。また携帯端末シェアの半分を占めると言われるiPhoneがNFC非対応ということの影響もあると考える。これらの結果は予想されていたことでもある。

tapeeはQRでも使用も可能であり、今後しばらくはNFCを補完するものとしてQRコードの併用を行っていく必要があるだろう。

しかしながら、NFCでアクセスする人も少なからずいたわけで、NFCを一度でも使用した人は(これは使った人でないと分からないが)その使いやすさからQRコードに戻ることはないと考える。QRアプリをダウンロードしアプリを立ち上げ、カメラを合わせて、といった作業は実に面倒である。

そういった意味でNFCを利用する人の割合は、まだまだ少ないけれども今後増える一方であり減ることはないだろう。

今後の展開

野外で実施される音楽系フェスティバルの入場者数は近年増加の一途とたどっているという。tapeeに限らず、NFCのこの分野における応用は期待が持てそうだ。

現状はチケットやリストバンドを係員が目で見て確認している。ここにNFCを導入することで、大きな効率化とユーザーにとっては利便性の向上が期待できる。 入退場やチケット種類の特定により入場可能なエリア等(A席、B席、アリーナ等)の制限、またローカルマネーをチャージすることでグッズや飲食物などの購入がキャッシュレスでできるようになる。また、昨今横行しているというチケットの偽造対策にも劇的な効果が期待できる。

またイベントによって得られる大量のタッチのデータを分析することで、動線の改善や配置の改良など次回イベントをよりよくする為の改良を重ねることができ、イベントをよりバージョンアップさせることが可能だ。

この野外フェスにおけるtapeeを含めたNFCの展開について、今後とも注目していきたい。